米国の三大ベッドメーカーのひとつ「サータ/Serta」。
全米でのベッドシェアは2011年以降、4年連続No.1で2014年度では22.1%という高いシェア率を誇り2位を大きく引き離しています。つまり、アメリカで最も売れているベッドメーカーなんですね。
このサータの製造販売ライセンスを日本で唯一保有するのが、「ドリームベッド」というベッドメーカーです。サータ以外にもフランスの高級家具ブランド「リーン・ロゼ/ligne roset」やドイツのデザイナーズベッドブランド「ルフ/RUF」等とライセンス契約を結んでいます。ライセンスと言っても単なる輸入販売ではなく、高い技術力で「ライセンス生産」を行うことで、オリジナルブランドの特許ノウハウを活かしながら、日本の生活様式や環境に合うように高度にリファインした製品をご提供しています。
今回は、ドリームベッド本社広島ショールームをご訪問して、サータを始めとして様々なお取り扱いブランドについて商品企画部の小野原様にお話を伺いました。
Q:ドリームベッドの成り立ちを教えてください。
A:ドリームベッドは1950年に広島で創業しましたが、戦後の復興と大きな関わりがあります。
広島に原爆が投下された1945年8月6日の朝、創業者が市内中心部にあった会社に出勤する時に自転車のタイヤがパンクして修理に手間取りそのおかげで九死に一生を得ました。この体験がきっかけとなって戦後の復興のために授産事業を立ち上げました。
当時、戦後のまっただ中で広島も引き揚げ者や戦災者達であふれていました。そのような人達に仕事を提供して教材や生活用品など様々な物が作られました。その中に、岩国などの近隣の進駐軍から宿舎で使っていたベッド・マットレスの修理がありました。もちろんマットレスを見るのは初めてで「西欧人というのは布団の中に針金を入れた物に寝ているのか」と驚いたそうです。その修理を経験するうちに、いずれ日本でもベッドは普及するに違いないと確信して会社を興したのが始まりです。
それからは、自社ブランドの「ドリームベッド」以外に、海外ブランドとの「コラボレーション/ライセンス生産」にいち早く取り組んでいます。「Serta/サータ」「ligne roset/リーン・ロゼ」「ruf/ルフ」などがあります。
全米売り上げNo.1のサータについて
Q:インテリアプラスでも大変人気のあるベッドブランド「Serta/サータ」ですが、御社でライセンス生産をするようになった経緯を教えてください。
A:サータ社は1931年に創業した米国の大手ベッドメーカーで、この4年間で全米売り上げNo.1を続けています。1979年に私共ドリームベッドとライセンス契約/技術提携を行いました。「サータ・ジャパン」という位置づけになります。サータの技術・商標・ノウハウを共有してアメリカ仕様そのままではなく、日本人向けにアレンジを行いドリームベッド自社工場で製造を行っております。
Q:サータのマットレスの特徴をご説明ください。
A:ポケットコイルをベースに使っていますが、他社のマットレスとの違いは「ゾーニング」といいまして、腰の荷重のかかる部分に強いコイルを配置して腰の落ち込みを防いで正しい寝姿勢を保つようにしています。他には、今は当たり前になりましたがピロートップ(ピローソフト)があります。マットレスの上にもう一つ布団のような詰め物が付いた仕様のことですが、実は米国サータ社がいち早く手がけた仕様です。もう一点あげますと「難燃素材」ですね。マットレスの側生地のすぐ下に「ファイヤーブロッカー」という燃えにくい素材を使っています。これはアメリカ本国仕様でも共通で採用されております。業界でパイオニア的な新しい仕様を積極的に取り入れていくのもサータの特徴と言えます。
サータ独自のマットレスとしては、4年ほど前にサータが全米売り上げNo.1になるきっかけとなった素材「ジェルメモリーフォーム」を採用した「iシリーズ/i series」があります。
当時アメリカではノンコイルマットレスの市場が非常に活性化した時期でした。サータだけでなく大手各社ベッドメーカーがこぞってノンコイルマットレスの市場に進出しようとして、特殊な詰め物のマットレスを発表しました。その中でも一番注目されたのがこの「ジェルメモリーフォーム」でした。スプリングマットレスに使ってもノンコイルのような優しい寝心地が得られました。
Q:「ジェルメモリーフォーム」は一般的な低反発素材と何が違うのでしょうか。
A:ベースは低反発素材になりますが、新開発の青いジェル(ジェルメモリーフォーム)が入っています。体圧が掛かった時にジェルが引っ張られその部分の密度が高くなります。荷重が掛かれば掛かるほど強い力で支えてくれ、底付き感の無い安定した寝心地を実現しています。逆に、一般的な低反発ウレタンは押せば押すほど底まで沈んでいくイメージがありますね。
あとは、低反発ウレタンより柔軟性があるので体に馴染むスピードが早いです。その反面、低反発の約6倍の通気性がありますので熱がこもりにくいという特徴があります。夏場でも快適にお使いいただけます。また、復元率や耐久性も低反発ウレタンよりも優れた性能を持っています。
「iシリーズ/i series」には、安定感のあるしっかりとした寝心地の「サータスリムスイート」、ジェルの心地よいフィット感と安定感が抜群のベストセラー「サータノーマルボックストップ」、しっかりめのポケットコイルにジェル入りのピロートップを配した「サータファームピローソフト」、よりラグジュアリーなやさしい寝心地の「サータスイートピローソフト」などがあります。
サータの最高級グレードの「サータスーペリアデイロイヤル」にもジェルメモリーフォームが採用されています。より上質な寝心地を目指した新製品の「サータスーペリアデイプレミアム」もございます。
Q:アメリカ仕様と日本人向けにアレンジされた国内モデルとの違いは何ですか?
A:基本的にアメリカ仕様はすごくソフトな寝心地になっています。中身はスプリングの上にウレタン等の詰め物が入っているのですが、アメリカ仕様はウレタンがすごく贅沢に入っています。コイルを全く感じないほど分厚く入っています。逆に日本仕様は比較的固めに仕上げることが多いですね。
Q:素朴な疑問として、欧米の人の方が体が大きいですよね。マットレスが柔らかすぎると体が沈んでしまわないですか?
A:欧米の方は日本人よりも体の凹凸が大きいので、その凹凸に違和感なく馴染ませるように柔らかい仕上がりになっていると言われています。
Q:日本人がマットレスを選ぶときによく出てくるのが「固いマットレスの方が腰痛に良い」というのがありますが・・・
A:畳で布団という文化で育ってきた先入観もあるかもしれません。
最近は海外旅行されたお客様で、欧米仕様のベッドの寝心地が良かったと柔らかいベッドを求められる方が大変増えています。ベッドメーカー各社そうだと思いますが、ドリームベッドでも様々なニーズにお応えできるよう、固いものからミドルそして柔らかいものと常にラインナップを揃えております。昔は無かったピロートップと呼ばれるマットレスに人気が出ています。
しかし、日本のお客様には「ヘタリ」を気にされる場合が多いという特徴があります。他社様も含め様々な詰め物の素材はありますが「ヘタリ」がまったく起きない素材は存在しません。できるだけヘタリが起きにくいように、日本仕様は出来るだけウレタンの層を少なくして、柔らかさを感じられるポケットコイルを使用したり、薄くても柔らかい寝心地が作れる特殊な詰め物などを組み合せて、お客様のニーズに応えられる製品作りを行っています。
Q:サータのマットレスって、他社のマットレスと比べて詰め物の層の数がすごく多いですよね。これはどういう理由があるのでしょうか。
A:ウレタンという素材は厚いままマットレスに入れてしまうと「ヘタリ量」が増える傾向があります。
それを防ぐためにサータ(ドリームベッド)のマットレスはあえて薄い詰め物を何層も重ねています。そうすることで1枚当たりのヘタリ量を減らして、総合的に全体のヘタリ量を減らすことが出来るわけです。
昔は当社も厚いウレタンを使っていた時期がありました。やはりヘタリが早くクレームになったそうです。そこから色々試行錯誤して現在の多層の詰め物にたどり着いたと聞いています。
Q:厚いウレタンはヘタリが早いということですね。
A:早いというより、ヘタリ量が大きいということです。ウレタンは厚くても薄くても必ずヘタります。厚みがあると沈む量が大きくなり表面部分も大きく引っ張られることになります。つまりヘタリが大きくなるわけです。
Q:何層もある詰め物の層ですが、その組合せはどのように決めているのでしょうか?
A:その組合せにはもちろん意味があって、たとえば、9ミリと20ミリのウレタンの組合せの場合、9ミリが上の場合と下の場合とでは寝心地が違います。加えてスプリングの種類が違うとまた寝心地が変わりますので、総合的に何回も組合せを変えて試作を繰り返します。長年のノウハウがあり、ベーシックな組み合せ方がありますので、それをベースにしながら組合せを模索しています。
しかし、そのチューニングもパッと抜いてパッと入れてが出来ればいいんですが、縫製まで全て完成させてから最終的な寝心地を確認する必要がありますので、何回も工場で試作を繰り返すことになります。
ドリームベッドのスプリングへのこだわり
Q:ドリームベッドのスプリングの品質について教えてください。
A:ポケットコイルに使われているスプリング線材(硬鋼線)は「SWRH82 B C種」という最高グレードの線材を使用しています。
SWRHという線材はJIS規格で21種類ほどに分類されておりまして、カーボンだったりマンガンのような化学成分の含有量によって区分けされています。一般的にカーボンが多いと反発力が大きく、マンガンが多いと耐久性が高くなります。当社の「SWRH82 B C種」の「82」がカーボン含有量で次の「B」がマンガン含有量となります。最後の「C種」というものがスプリングの強度を示します。ABCの3種があり「C種」が一番強度が高くなります。
Q:ドリームベッドのマイクロドリームというマットレスには非常にたくさんのコイルが入っていますが、どのような効果があるのでしょうか。
A:通常は樽型のポケットコイルを使用していますが、マイクロドリームに使っているコイルは円筒形で線材の径を細くしています。通常は1.9mmと2.0mmなんですが、1.3mmと1.5mmの細い線材を使用してさらに巻き数を多くしてコイル自体の全長も長く(7.7インチ)なっています。
スプリングは巻き数が増えるとクッション性が良くなります。線径を細くしていることもあってコイル一つ一つの柔らかさが出るんですね。ただ柔らかいだけでは支えが効きませんので、コイル自体を細くすることで一枚のマットレスにたくさんの数を入れることができ、しっかりとした支えと柔らかさを両立しています。
Q:ポケットコイルの高さを変えるとどのようなメリットがあるのでしょうか。
A:ポケットコイルの高さを変える時に、マイクロドリームのように巻き数を増やして高くする場合と、巻き数は変えずにそのまま引っ張って高くする方法があります。引っ張る方法ですとあまり感触は変わりません。スプリングは巻き数が重要になります。巻き数を増やして高くすると横になった時の最初の「当たり」が少し柔らかくなります。そして、グウっと重い荷重が掛かると巻き数が多い分、密度が高いのでしっかりとした支えになります。
ポケットコイルの配列を変えることで寝心地を変えることもできます。一般的な並行配列がソフトな寝心地、集積密度を上げた交互配列がノーマル(ほどよい硬さ)になります。よりハードなタイプとして特殊な円すい形ポケットコイルを上下逆に配列したトルネード(ドリームブランドのみ)があります。
また、サータのマットレスになりますが「ポスチャーセレクト」という新しいシリーズを販売させて頂いております。
3種類の高さのポケットコイルで分類しておりまして、5.8インチ、6.8インチ、7.7インチの線径1.9と2.0mmの2種類ずつを並行配列と交互配列で作り、計6種類のラインナップをご用意しました。
寝心地でいいますと5.8インチがハード、6.8インチがミディアム、7.7インチがソフトとなります。そしてそれぞれのグレードに並行配列(柔らかめ)と交互配列(硬め)とより細かいバリエーションがあり、微妙な寝心地の好みに対応できるようになりました。
ドイツのアップホルスターベッドブランド「ルフ/RUF」のご紹介
Q:ドイツのベッドブランド「ルフ/RUF」についてご説明ください。
A:「ルフ/RUF」は、ドイツでアップホルスターベッド(布張りベッド/ファブリックベッド)の分野で高いシェアを誇るベッドメーカーです。ドイツ本国の「ルフ/RUF」では多くの優秀なデザイナーによって非常に斬新で優れたデザインのベッドフレームを展開しています。日本でライセンス生産するにあたり本国ドイツのデザインをそのまま採用しています。
ベッドフレームが決まったら張地のファブリックを多数のラインナップから選ぶことができます。グレードの高い張地をお選びいただくとまるで違う雰囲気が楽しめるというのもルフの大きな特色のひとつと言えると思います。
特徴としては、何よりそのデザイン性、本国のデザインをそのまま使った個性的なファブリックベッドですね。
ドイツというとノンコイルマットレスのイメージがあるかもしれませんが、比較的硬めの寝心地が好まれる傾向があります。日本でライセンス生産するマットレスも同様に柔らかすぎないしっかり目の寝心地で製造しています。ルフのマットレスのハイグレードタイプにはドリームベッドのマイクロドリームと同じ7.7インチの超高集積配列のポケットコイルが使われています。
ありがとうございました。
今回は、広島のドリームベッド様本社ショールームにお伺いしまして、サータやルフ、そしてドリームベッドブランドのベッド・マットレスについて詳しくお話を聞かせて頂きました。
マットレスの詰め物層がたくさんある理由や、スプリングの高い品質など、今回の取材で初めて知ったこともたくさんあり、本当に勉強になりました。ドリームベッドやサータのマットレスが高い評価を受けている理由が分ったような気がします。
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